展示会

環境に配慮した展示会出展|ブースを構成する素材の特徴と選び方とは?

環境配慮、展示会出展、SDGs
2023.07.11

持続可能な社会の構築に向け、企業のエコロジー志向の活動が注目されています。中でも、SDGsへの取り組みを反映した展示会出展を念頭に置いている企業が増えていると言えるでしょう。
本記事では、「環境に配慮した展示会出展」をテーマに、その背景となる環境問題と、展示会ブース素材の選び方について詳細に解説します。

展示会ブースと環境問題について

展示会業界と環境問題の関係性について、考えたことがある方は少ないかもしれません。
しかし、実は展示会業界でも環境に配慮した動きが進んでいます。以前の展示会業界の状況とともに、現在広がっている環境に配慮した視点をご紹介します。

環境配慮の視点で見る展示会業界のこれまでと現状

展示会業界と環境問題がどのように連携しているのかを理解するためには、以前の展示会業界の状況と、現在の環境に配慮した視点の両方を照らし合わせて考えることが重要です。
以前は展示会の開催期間(1日~3日)が終わった後、ブースは取り壊され、多くの素材が分別もされずに廃棄されてきました。しかし、こうして会期終了後の廃棄物処理が問題視されていたものが、全てが埋め立て処分や焼却処分になるとは限らず、リサイクル処理されているものが少なくないのが現状です。

昨今ではSDGsが浸透する中でさらに高まる意識のもと、展示会ブースの構成素材や、会期後の処理についても把握したいという人々の意識の高まりも伺え、世の中の変化が起こっているように見受けられます。そしてより効果の高いものが選ばれるようになってきました。
こうして、現在の展示会はマーケティング施策としての自社商品やサービスの訴求に加えて、環境に配慮したブースの設計が重視されています。
環境意識の変化から環境負荷が少ない出展を目指す企業は決して少なくないので覚えておきましょう。

環境に配慮した展示会出展の考え方

環境に配慮したブースを導入する企業が増えているのは確かですが、「エコ」の導入には、費用やデザイン性の問題が存在します。実際、リサイクル素材やエコ電力を採用すると、通常よりもコストが高くなるケースが多いです。
また、エコ志向だけに重きを置いてしまうと、デザイン性が希望通りにならない可能性もあります。そのため、デザイン性にこだわりたい場合や費用を抑えたい場合には、環境に配慮したブース作りが難しいというジレンマが生まれてしまいます。
とはいえ、デザイン性や費用を気にしすぎた結果、以下のような従来のブース設計をしてしまい、

  • 違法伐採が疑われる木材を使用する
  • 大量に作って大量にゴミを排出する
  • いままで通り電力消費量が高い蛍光灯を選ぶ
といった環境問題に聡い、来展者を呼び込めない事態に陥っては本末転倒です。
このような状況から脱却し持続可能な社会を実現するためにも、エコ志向の展示会出展にはある程度のコスト負担が伴うことを理解しておくようにしましょう。

もちろん、環境に配慮した視点を持つことは、展示会出展の戦略や企業のSDGsへの取り組みに寄与し、企業自体に多大なメリットをもたらします。
例えば、環境に配慮したブース出展し、SDGsの取り組んでいることについて自社HPなどで告知することで、企業のブランドイメージの向上を期待することが可能です。展示会ブースの設計・施工を業者に依頼する際は、環境負荷軽減の視点を持っていることを選ぶ項目の一つとして考慮してみてください。

代表的な展示会ブース構成素材|特徴と環境配慮の視点

展示会ブースのデザインと構築は、さまざまな素材の特性を理解することが必要です。以下では、展示会ブースで一般的に使用される代表的な素材を探り、その特性と環境への配慮の視点について説明します。

システムユニットブース

システムユニットブースは、規定サイズの部材を組み合わせて使用するブースです。
基本は角の部材ですが、アール部材も存在するため、規定範囲内であればデザインの自由度が確保できます。


展示会ブース、システムユニット

システムユニットブースの特徴とメリット

システムユニットブースには以下のメリットがあります。

  • 部材を使いまわせるため、会期終了後に廃棄するものが少ない
  • レンタルが多く安価でブースが立てられる
  • 規定サイズの部材を組み合わせて使用するため、運搬時のサイズもあらかじめ想定できる
  • 分解でき、運びやすい
上記のメリットがあります。使いまわせて、廃棄するものが少ない点では、環境に配慮したブース設計が可能です。

システムユニットブースの弱点・注意点

当然、システムユニットブースにもデメリットが存在します。具体的には以下の4つです。

  • 複雑な造作デザインができず、オリジナル性を出しづらい
  • 分解できる材数が多いが規格サイズのみ
  • 柱と柱の間が広がりすぎると強度に不安がある
  • 繰り返し使用するため、部材に傷や汚れが付着しているものが多い
デザインにこだわったブースを設計したい方には、システムユニットブースはおすすめできません。

トラスユニットブース

トラス部材ブースは、システム部材のひとつである「トラス(三角の集合体)を使用したブースのことです。大規模な出展やブースの高さを出したいときにはトラス部材ブースが適しています。


展示会ブース、トラスユニット

トラスユニットブースの特徴とメリット

トラス部材を使った展示会ブースの特徴とメリットは次のとおりです。

  • 丈夫でダイナミックなブースを作成できる
  • 使いまわし可能で、部材数を少なくできる
  • 荷重がかからないのであれば、ブースの開口を10m程度とかなり広くとれる
上述のシステムユニット同様、使いまわしが可能であるため、廃棄するものが少ないです。
また大規模な出展を検討している方は、トラス部材ブースを検討してみてください。

トラスユニットブースの弱点・注意点

トラス部材を使ったブースには、以下のような弱点・注意点があります。

  • 無骨な印象があるため、出展のコンセプトに合わない場合がある
  • 部材が重いので組み上げるためのクレーン車と、動力となるガソリンや電気が必要
廃棄するものは少ないですが、組み上げるためのエネルギーが必要となります。
とはいえ、大規模出展を検討している方にはおすすめしたいブースです。

ファブリックシステムユニットブース

ファブリックシステムユニットはシステム部材と布素材を組み合わせたブースです。システム部材の骨組みに布のカバーのようなものをかぶせた大きなパーテーションのような造作や、布の柔らかさを活かした曲線のような造作ができます。

ファブリックシステムユニットブースの特徴とメリット

ファブリックシステムユニットのメリットと特徴は以下の4点です。

  • 既定のサイズの部材を組み合わせて使いまわしができる
  • 布素材で広い面を覆うので、比較的部材数が少なくできる
  • エコ素材の布を利用すると、より環境配慮をアピールできるブース設計ができる
  • 布素材は畳めばコンパクトで運搬しやすい
上記のメリットがあり、環境に配慮したブース設計ができます。システムユニットで、かつ曲線の柔らかな印象を表現したい場合はファブリック素材の活用がおすすめです。

ファブリックシステムユニットブースの弱点・注意点

とは言え、ファブリックシステムユニットにも、以下のデメリットもあります。

  • 強度を持たせるためにベースや支えが必要になる
  • 布の風合いにこだわったりエコ素材を選んだりすると費用が高い
SDGsや環境に配慮できる一方で、費用がかかる可能性があるため注意しましょう。

木工ブース

木工ブースは、木材や合板などを組み合わせて作るブースです。一見、廃棄するものが多いように思えますが、実際には要望に応じてデザインや造作を使い回せます。


展示会ブース、木工造作ブース

木工ブースの特徴とメリット

木工ブースの特徴とメリットは以下のポイントです。

  • 規格サイズなく自由な設計が可能で、オリジナル性の高いブースを作成できる
  • 表面に経師貼りなどで仕上げを施すことが多く、施工都度毎回仕上げるため見栄えが良い
  • 木材の素地をそのまま見せるナチュラルテイストなブースを作成できる
  • 部材によって使いまわしができる
  • 廃材が出てもしっかりと処理業者を選べばリサイクルへ回せる
上記のようなメリットがあるため、オリジナル性の高いブースを希望で、かつリサイクルなどの環境に配慮した取り組みを紹介したい場合にもおすすめです。

木工ブースの弱点・注意点

一方で、以下のような弱点・注意点もあります。

  • 会期前の造作の製作やブース施工に時間と手間がかかる
  • 終了後のブース解体に手間がかかる
  • 規模やデザインが柔軟に設計できるため特注のデザイン・施工になることが多く、製作費用が高い
木工ブースには上記のようなデメリットも存在するため、環境配慮などの要素を総合的に考慮し、展示の目的や予算にあわせて選択することが重要です。

展示会ブースを構成するその他の素材|特徴と環境配慮の視点

展示会ブースの素材については、前述した各種システムユニットブース、木工ブースが一般的ですが、その他にも多種多様な素材が存在します。
ここでは、それらの素材の特徴とメリット、SDGsや環境配慮の観点からの注意点を紹介します。

内照型の直方体システムユニットブース

内照型の直方体システムは壁の中に照明がある内照式のシステム部材を使用したブースです。直方体のため壁として単体で自立できる特徴があります。

内照型の直方体システムユニットブースの特徴とメリット

内照型の直方体システムユニットには以下のメリットがあります。

  • マットな面も内照(良問でも片面、側面も)ができる
  • 大判のグラフィックも明るくすっきり見せられる
このようなメリットがあるため、おしゃれで目立つブースにしたい方におすすめします。

内照型の直方体システムユニットブースの弱点・注意点

内照型の直方体システムは分解できる分部材数が多いですが、規格サイズしかなく部材が大きいため重く運搬しにくいというデメリットがあります。
また、複雑なデザインのブースにも向いていません。とはいえ、最近ではLED照明が増えているため、内照式のブースでも柔軟なデザインができる場合もあります。

段ボールユニットブース

段ボールユニットは、その名前のとおり段ボール素材を使用したブースです。リサイクルやリユース素材が多く、多種多様な種類があるため、選択の幅が広くなります。

段ボールユニットブースの特徴とメリット

段ボールユニットは以下の4つのメリットがあります。

  • 軽いため運搬が楽でかさばらず、撤去と持ち帰りが容易である
  • 構造や規模によっては業者に依頼しなくても自分たちで組立てできる
  • 木工よりも作るのは高いが、複数展示会を使いまわす場合は安価で利用できる
  • 製紙原料としてリサイクルできる
リサイクル可能な素材であるため、小規模のブースや複数の展示会に出展を検討している方におすすめです。

段ボールユニットブースの弱点・注意点

段ボールユニットの注意点は以下の3点です。

  • 材料費が高い
  • レンタルではないため、1度の出展のみで使う場合は割高になる可能性がある
  • 使いまわす場合は運搬時や会期中の状態により角が折れたり、汚れたりする可能性がある
段ボールユニットは複数の展示会に使用するのに適していますが、運搬などには注意が必要です。

SDGsや環境配慮の視点を展示会ブースに取り入れよう

SDGsや環境に配慮した展示会出展では、「予算・エコ素材・デザイン性・納期」などを考慮する必要があり、一度に全ての要件をクリアするのは容易ではありません。そのため、「何を重要視して出展するのか」を決め、様々な視点で検討してブースを設計することが必要です。
もちろん、環境に配慮したブース設計には、業者の協力も必要になります。ブース施工業者に依頼する際は、環境への配慮や予算、ブースの規模に合わせて比較検討してみてはいかがでしょうか。
なお、弊社は展示会ブース設計・施工のエキスパートとして、様々な企業様の展示会出展をサポートしております。初めての出展や、展示会出展に不慣れな場合も、ぜひ弊社にお気軽にご相談ください。
弊社の展示会サポートについてこちらのページでも詳しく紹介しております。

植田 光一

植田 光一

中央宣伝企画株式会社
展示・イベント担当