飲食店を開こうと考えたとき、考えなくてはいけない検討事項の一つがお店のレイアウトです。そして、レイアウトを考えるために重要な点として「居心地」と「回転率」を挙げることができます。しかし、両者のバランスをどのようにとったら良いか悩んでいる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は飲食店レイアウトを決定する居心地と回転率のバランスのとり方について解説していきます。
目次
はじめに飲食店の居心地と回転率はどのような関係にあるのか見ていきましょう。
まずは居心地についてみていきましょう。昔から飲食店は、食事だけでなく、リフレッシュやコミュニケーションの場としても機能していました。現代でも、このような要素は重要な役割を持っています。
例えばコロナ禍以前の調査では、飲食店は7割以上がリピート利用であるという結果が出ています 。また近年は、飲食店に本屋などを掛け合わせた複合的な店舗も人気です(参考文献:Foodist media)。
飲食店には、単なる食事の場だけではなく、複数の用途やそこでしかできない体験も求められており、そのためにも居心地が重要だといえるでしょう。
次は回転率について見ていきましょう。飲食店にとってなぜ回転率が重要になるのか、それは回転率が売上を高める上でのキーポイントになるからです。売上を高めるには、お客様一人当たりの単価を上げるか、来客数を増やすか、どちらかを行う必要があります。このうち、来客数を増やすために効果的なことが「回転率を上げる」ということになるのです。
では、どのようにしたら回転率を上げることができるのでしょうか。回転率にとって重要な点は「お客様一人あたりの滞在時間」です。つまり、回転率を上げるためにはお客様の滞在時間を減らすことが重要であると言えます。そうすると「お客様を長居させないお店作り」が必要となります。このため、居心地と回転率はシーソーのような関係性で考えられることが多いです。
ここまで、居心地と回転率について見てきました。売り上げのことを考えると、レイアウト設計の際には居心地だけでなく回転率にも注意を払わなくてはなりません。
居心地と回転率、二つのバランスを考えるために大切なことは「飲食店のタイプ」を設定することです。居心地と回転率という二つの軸から飲食店を4つのタイプに大きく分類してみましょう。
まずは①の両立タイプ をみてみましょう。両立タイプは居心地もよく回転率も高い、まさに「理想の飲食店」と呼べるお店です。このような飲食店にするには、「こういったレイアウトにすべき」というような絶対解が存在するわけではありません。飲食店のお客様層や来客状況を見極めた上でレイアウトや経営方法を決めていく必要があります。詳しくはこのあとご紹介します。
次に②居心地重視タイプ を見てみましょう。お客様がゆっくりと過ごすことを目的としたカフェや常連さんと店員さんの距離が近い飲食店は、居心地重視タイプのお店といえるでしょう。また音楽や本など、食事以外のコンテンツを提供することを考えている場合にも居心地重視タイプが適しています。
居心地重視タイプの飲食店は、どのような居心地を求めるかによってレイアウトの方向性が変わってきます。一人でゆっくりと過ごすことを目的としたお店なのか、お客様同士やお客様と店員さんの距離が近いお店なのか。お店の目的設定を明確にすることでそれに応じたレイアウト計画が出来上がってきます。
居心地も回転率にも注意を払わない③非考慮タイプも存在しえます。飲食店付近に競合になりえるお店がないため考慮をする必要がないこともあるでしょうし、経営方法など何らか問題からこの状況に陥っているパターンもあると思われます。とりわけ後者の理由で、「居心地も回転率も考慮できていないかも」と思った方は、③を脱するためにレイアウトを再検討した方が良いかもしれません。
最後に④の回転率重視タイプ を見てみましょう。ラーメン屋をはじめとした、お客様が食事のために来店するような飲食店は回転率重視タイプが適していると言えます。
回転率重視タイプの飲食店であれば、居心地が必ずしもいい必要はありません。むしろ、お客様の過度な長居を防ぐために、什器やレイアウトである種の「居心地の悪さ」を演出することも一つの方法といえます。
このように、居心地と回転率という2つの観点から飲食店のタイプを分類することができます。初めは、②居心地重視タイプか④回転率重視タイプのどちらかを目指すことがオススメです。居心地が大切なのか、回転率が大切なのか、皆様のお店はどちらでしょうか。
大切なことは、「飲食店にくるお客様」を想像することです。飲食店の立地、周辺の客層、出そうとしている食べ物やコンテンツを好む客層、そもそもどのようなお客様に来ていただきたいか。このようにお客様層を見極めることで飲食店のタイプや店舗のレイアウトが決まっていきます。
しかし、それだけではありません。お客様層の分析をさらに徹底することで、「居心地も回転率も両立できる」レイアウトや飲食店を作れるかもしれません。
居心地も良く、回転率も高い飲食店。どうすればそんなお店を目指せるのでしょうか。ここからは弊社が実際に提案させて頂いた事例をもとに、居心地と回転率が両立できる飲食店とレイアウト作りを考えていきます。
弊社がご提案させていただいたのは国内のとあるエンターテインメント施設です。こちらでは、館内レストランの混雑という問題を抱えていました。レストランの回転率を上げて、混雑を解消することはできないか。問題を解決するために、弊社では現状この施設にどのようなお客様が来場しているのかを考えてみました。すると、館内レストランが混雑する原因が明らかになってきました。
混雑の背景には、お客様層の変化がありました。かつて、このエンターテインメント施設が想定していたのは家族連れのお客様でした。しかし、時代が変わるにつれて、家族連れのお客様よりも、キャラクターや施設自体のファンの方が個人で訪れるパターンが多くなってきました。運営会社もおひとりさまの来場を推進していました。
そこで問題になってきたのが、館内レストランの混雑問題です。これまで、このレストランの席は4人席と2人席が半々で配置されていました。すると、おひとりさまがレストランを使ったときに、お客様が座っていないのに利用できない「死に席」が発生してしまいます。特に、家族連れを想定した4人席をおひとりさまが利用すると、3席の死に席が発生することになります。この問題が、レストランの混雑を引き起こしていたのです。
レストランの混雑を解決するため、弊社が提案したのは「おひとりさま席」というカウンター席です。従来の2人席、4人席の数を削減し、個人の来場者のためのカウンター席を新たに設置するというレイアウト提案を行いました。
このレイアウトのポイントは2つあります。
一つ目は「満足度を上げるために回転率を上げる」という点です。
ここでいう「満足度」は「居心地」とも言いかえることができるでしょう。せっかく遊びに来た施設でレストランが混雑していたら、疲れてしまったりストレスが溜まったりしてしまいます。ようやく座席にたどり着けても、混雑していては居心地も良くないでしょう。
来場者の皆様に楽しい気持ちで帰ってもらう、そのために混雑緩和をするという点がレイアウト設計の上で重要でした。
二つ目は「おひとりさまの満足度も上げる」という点です。
先述のように、近年この施設では個人で来場するお客様が増えていました。これらのお客様にとって来場のポイントは「推し活」でした。そのため、レストランを「推し活」がしやすい環境にすることにこだわりました。
例えば、パーテーションを設置することで周りの視線を遮って世界観に没入しやすくなります。あるいは席に照明を設置すればきれいな写真が撮りやすくなるでしょう。「おひとりさま席」は個人のお客様のニーズにもお応えしたレイアウトの提案なのです。
このように、客層の変化、現在のニーズを注意深く観察することで、「居心地」と「回転率」を両立するレイアウトが見えてくるかもしれません。また回転率を重視したレイアウトの中にも居心地を改善する工夫を施すこともできるのです。
ここまで飲食店の「居心地」と「回転率」について解説をしてきました。
飲食店のレイアウトを考えるときには、まず「居心地」と「回転率」という2つの軸から、飲食店のタイプやお客様層を整理することが大切です。そしてお店のレイアウト設計において、「居心地」と「回転率」のどちらを重視するのか、どのようなバランスを取るのか設定していきましょう。ニーズがうまく当てはまれば、2つの両立も叶うかもしれません。
ただし、こういった分析や設計を一から考えるのはなかなか難しいものがあるかと思います。中央宣伝企画株式会社ではこのような飲食店のレイアウト設計をサポートさせていただいております。お困りごとがございましたら是非ご相談ください。
コラムでは、今後も飲食店のレイアウトデザインについて解説していきます。今回の内容について「もっと知りたい」と思った方は、以下のページもご覧ください。